私たちの体の中では免疫細胞が病原体やアレルゲン、がん細胞などと戦って、体を守ってくれています。最先端の研究をしている免疫博士から最新の話題までをわかりやすく紹介してくれます。
もちろん、質問もできますよ!!!
ハカセの紹介とトークの内容
第一部 (免疫細胞の種類) 10:35~11:35

竹田 潔先生
大阪大学免疫学フロンティア
研究センター
免疫のしくみ
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により私たちの生活様式が大きく変わりました。COVID-19に限らず、天然痘、ペスト、インフルエンザなど人類の歴史を変えてきた感染症がいくつもあります。われわれ人類はそのたびに立ちがあり、感染症を克服してきました。感染症に対抗するために私たちに備わっているシステムが免疫です。免疫が病原微生物により活性化され、それらを排除するメカニズムについて概説します。

鍔田 武志先生
日本大学
歯学部
B細胞と抗体
〜なぜ特定の物質を攻撃できるの?〜
免疫応答では、B細胞が抗体を産生し、インフルエンザウイルス、花粉などのように特定の物質を攻撃します。どのような仕組みで特定の物質だけを攻撃できるのでしょうか?抗体は、医薬品としても使われています。なぜでしょうか?これらの「ふしぎ」についてお話しします。

河本 宏先生
京都大学 医生物学研究所
再生免疫学分野
T細胞を知って、創って、
がんやウイルスを退治!
T免疫の3つの主な仕組みは、「食細胞が病原体を食べる」「B細胞が抗体を作る」「キラーT細胞が感染細胞を殺す」です。別な種類のT細胞である「ヘルパーT細胞」は、食細胞やB細胞の働きを助けます。現行のT細胞を使ったがん免疫療法では、患者から採取されたT細胞を使うので、手間と時間がかかり、高くつきます。一方、拒絶されない型のiPS細胞からT細胞を大量生産すれば、誰にでも、すぐに、安く提供できます。
第二部 (感染・アレルギー・自己免疫) 12:30~13:30

前仲 勝実先生
北海道大学大学院
薬学研究院
抗体がウイルス感染を防ぐ様子を見る
ウイルスは人の細胞に侵入して感染を引き起こします。抗体はウイルス表面のタンパク質に結合し、侵入を防ぎます。この様子は肉眼では見えないため、電子顕微鏡で観察します。本発表では、新型コロナウイルスを例に、ウイルスと抗体の“戦い”をどのように観察し、薬やワクチン開発に役立てるかを紹介します。

中島 裕史先生
千葉大学大学院医学研究院
アレルギー・臨床免疫学
免疫の暴走:
アレルギーのふしぎ・未来
私たちの体を守る免疫は、本来はウイルスや細菌と戦う大切な仕組みです。しかしこの免疫がまちがって無害なものに反応してしまうと、アレルギーという現象が起こります。本講演では、ぜんそくを例にアレルギーの仕組みや最新の治療法を解説し、未来の治療法の可能性について紹介します。

荒瀬 尚先生
大阪大学免疫学フロンティア
研究センター
自己免疫病
免疫は病原体から体を守るための防御システムであり、ウイルスや細菌のみを特異的に攻撃して排除する。ところが、免疫は誤って自分自身の正常な細胞を攻撃してしまうことがある。このよう免疫が誤って自分自身の細胞を攻撃してしまうことで、さまざまな自己免疫病が引き起こされる。そこで自己免疫病の原因について簡単に解説する。
第三部 (RNA・がん・腸内細菌) 13:45~14:45

竹内 理先生
京都大学大学院
医学研究科
RNA(アールエヌエー)と免疫
メッセンジャーRNAは、私たちの身体の設計図であるDNAからコピーされ、その暗号はタンパク質に翻訳されます。一方、病原体であるウイルスや細菌もRNAを利用しており、免疫細胞は病原体のRNAを検知して免疫応答をおこします。メッセンジャーRNAワクチンの実用化には、RNAを病原体と間違わせないためにいろいろな工夫がありました。また、RNAは免疫のブレーキにも利用されています。RNAと免疫の奇妙な関係についてお話しします。

河上 裕先生
国際医療福祉大学
医学部 免疫学
免疫でがんを治せるの?
免疫は、自分の細胞の遺伝子に傷がついて、異常に増えて体を壊すがん細胞を排除できるのでしょうか?免疫学の発展により、免疫は、がん細胞を攻撃し得るが、いろいろな仕組みで免疫から逃れていること、がん細胞の遺伝子異常・遺伝的な免疫体質・生活習慣等によって、がんと免疫の関わり方が異なるので、免疫チェックポイント阻害薬(ノーベル賞)も含めて、個々の患者さんに合わせたがん治療が必要なことが分かってきました。

新藏 礼子先生
東京大学定量生命科学研究所
免疫・感染制御研究分野
細菌を味方にして病気を防ごう
細菌と聞くと’バイキン’の悪いイメージがあると思います。ですが、私たちのからだには目に見えない多くの細菌が一緒に生きていて、私たちのからだを病気から守っています。味方になってくれる細菌を増やすためのヒントを考えてみましょう。
第四部 (局所における免疫細胞) 15:00~16:00

磯部 紀子先生
九州大学大学院
医学研究院神経内科学
頑張りすぎる免疫から
脳・神経を守る
免疫は病原体から体を守ったり、癌細胞をやっつけたりと大事な役割を果たしますが、時に、頑張りすぎて、脳や末梢神経を不用意に攻撃してしまうことがあります。脳を守る仕組みにどのようなものがあるのか、頑張りすぎる免疫とは何なのか、やさしく解説します。

藤生 克仁先生
東京大学大学院
医学系研究科
心臓を動かす免疫細胞
心臓の中には、心臓を動かす心筋細胞だけでなく、実は免疫細胞も住んでいます。この免疫細胞は、心臓を元気に動かすために欠かせない存在だということが、最近の研究でわかってきました。さらに、免疫細胞には「記憶する力」があり、その記憶が心臓の病気と関係していることも明らかになってきました。この講演では、そんな心臓と免疫細胞の不思議な関係について、いっしょに考えてみましょう。

塚崎 雅之先生
昭和医科大学
歯学部口腔生化学講座
骨と免疫のふしぎな関係
病原体やがん細胞と戦う「免疫」と、体を支えるかたい「骨」は、一見すると関係がないように思えるかもしれません。しかし実は、このふたつは体の中で深く関わり合っていて、おたがいに影響を与え合っています。ここでは、骨と免疫のやりとりが健康や病気にどのように影響するのか、さらに最近の研究で明らかになった、骨にそなわる不思議な「がんの進行を抑える力」について紹介します。